対応処理一覧

窒化処理(鋼の表面硬化処理)

鋼に窒素を浸漬(しんし)させて表面に窒素化合物の硬化層を生成する処理です。また、500℃程度の低温での処理のため製品の形状変化や歪みが少ないことも特徴です。窒化処理方法としては一般的に4種類の方法があります。

※浸漬:液体に浸すこと
※硬化層:硬化した部分

1.ガス窒化処理(硬度:HRC67~/SCM645)

鋼に窒素を拡散進入して表面を硬くする処理方法です。主にアンモニアガスを利用し化学変化にて表面から0.03~0.3mm程度の硬化層が出来ます。加熱温度が低いので変形や歪みが少ない硬化処理です。

鋼を窒化炉の中に入れてアンモニアガスを入れ500~550℃で加熱します。窒素が鋼の表面から内部に侵入すると、鋼内部のモリブデンやアルミニウムなどの元素と窒素が結合し硬化層が生成されます。

また、ガス軟窒化よりも硬化層が深くなります。
※拡散進入:分子が熱によって移動する現象

2.ガス軟窒化(硬度:HRC40~55/炭素鋼)

熱処理による表面加工のひとつです。金属表面の鉄(Fe)に窒素(N)を化合して薄いFe3N層を生成する事により金属表面の硬度を高めます。

表面から5~20μm程度の硬化層が生成されます。

高周波焼入れ、真空焼き入れ、浸炭焼入れ等とは異なり金属組織の変化による硬度アップとは異なり変形が非常に少ない事も特徴です。

対応出来る鋼材はSPCC(冷間圧延鋼板)からS45C等の炭素鋼など幅広く処理が可能です。

※炭素鋼:炭素の含有量が0.02%~2.14%までの鋼

3.タフトライド(硬度:HRC40~55/炭素鋼)

ガス軟窒化と同様な表面処理のひとつですが、ガス軟窒化よりも短時間で処理が可能です。処理方法は鋼材をソルトバス(塩化ナトリウムや塩化バリウムなど数種類を混合した塩浴剤)の入った

約500℃の熱処理槽に入れて空気を送って処理をします。
ただし、シアンを使用するために公害防止対策が必要となります。

また、タフトライドとはドイツのデグザ社が特許と商標兼を保有しているため日本ではイソナイト処理という商標で登録されています。

タフトライド処理はガス軟窒化処理にて代替えしても特に問題はありません。

4.プラズマ窒化(硬度:HRC40~55/炭素鋼)

イオン窒化とも呼ばれることもあります。窒化処理炉の中で製品と炉壁の間に直流電圧を掛ける時に発生するグロー放電を利用します。

グロー放電を発生させるために反応ガスとして水素ガスを使用します。励起したプラズマに窒素ガスを入れると窒素イオンに変わります。

窒化イオンを製品表面に帯電させて、活性化窒素を拡散させて表面に硬化層を作ります。処理温度も500℃以下であり製品の変形や歪みは非常に小さくなります。

製品へマスキングなどの部分処理を施す事により部分的に窒化処理が可能です。 

黒染め処理

四酸化鉄皮膜処理、フェルマイト処理とも呼ばれます。

鋼材の表面を化学処理にて黒色の皮膜を作る防錆処理であり表面の皮膜厚さが1~2μm程度で処理後も寸法精度への影響が少ない。

処理方法は140℃~145℃のアルカリ性の水溶液の中へ製品を浸して化学反応により黒錆(四酸化皮膜)を発生させ表面を覆います。

黒染め処理は鋼材の全てが黒色に染まる分けではなく、鋳物や熱処理を施した部品などは茶褐色となり錆びた様な色合いとなります。また、クロム、ニッケルなどを含む合金の場合はグレーに染まります。

防錆処理ですが油が無くなると水分や空気が浸透し赤錆が発生しますので、時々油の染みたウェスなどで表面を拭いておくことが必要です。

※クロー放電:原子や分子などの気体粒子に電子が衝突して粒子が発光する現象で発光を伴う放電 

熱処理(焼き入れ)

鋼に熱を加えたり冷ましたりする事により鋼の組織を変化させて硬さを変化させる処理です。

焼き入れ:熱を加えて鋼を硬化させます。

焼き鈍し:熱を加えて鋼を軟化させる事で熱した後に時間を掛けて冷却します。

焼き戻し:一度焼き入れした鋼を焼き入れ時よりも低温で再加熱する事により粘りや靭性を高めます。

1.浸炭焼入れ(硬度:HRC62以下/SCM415,SCM420)

特徴は鋼の表面を硬くし、内部は柔らかい状態で耐摩耗性と靭性の両方を待たせた硬化処理です。

一般的にはSCM415、SCM420(炭素量の少ないクロムモリブデン鋼)が使用されます。特にねじ関連部品やシャフトなどの硬さと靭性を必要とされる部品に対しての処理方法です。

一般的にはブタンガス、天然ガス、プロパンガス、都市ガスなどの変成した浸炭性ガスや液体を滴下して、発生した浸炭性ガス槽の中で加熱して焼き入れをします。 

2.真空焼き入れ(硬度:HRC58以上/SKD11)

真空炉を使用する熱処理のひとつの方法です。鋼材を真空炉の中(真空状態)で加熱後に油またはガス、水で冷却する熱処理です。

真空状態(酸素の無い状態)で鋼材表面の酸化、脱炭を防止しながら焼き入れをします。主に冷却には窒素ガスが用いられる事が多く、焼き入れ後の炉の内部へ窒素ガスを入れファンで撹拌し鋼材を冷却します。高圧ガス(10気圧ほど)による急冷をする場合もあります。

真空焼き入れは真空状態にて加熱を行うので鋼材の温度上昇が穏やかなので表面と内部の温度差が小さいので変形が起こりにくく歪みが小さい事が特徴ですが、急速に冷却する程変形や歪みが発生します。

3.高周波焼入れ(硬度:HRC47~58/S50C)

コイルを使用して高周波電流から発生する誘導加熱により鋼材を加熱する熱処理です。特徴はコイルのサイズや周波数により熱量を変更可能なため必要な部分や表面だけを硬化させる事が可能です。

コイルに高周波電流を流すと鋼材表面に渦電流が発生し発熱します。渦電流は周波数が高いほど浅く、周波数が低いほど深く浸透します。

特に鋭角的な角などは加熱過剰となり変形や割れなどが発生する場合があります。 

4.ズブ焼き入れ(硬度:HRC58以上/SKD11)

鋼の内部まで熱を加えて全体を硬化させる焼き入れです。鋼全体に熱を加えるために形状変化や歪みが大きいので部品の用途によっては、研磨などの後処理加工が必要となります。

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